2009/08/24
9回に渡りレポートしてきましたエンジンOHもいよいよ今回が最終回!
フレームへの搭載から各部の調整、油脂類の給油、外装等の装着を経てついにエンジン始動です(^^)
早速作業に入りますが、このパートで一番気をつけなければならないのは、最初に行うフレームへのエンジン搭載作業でしょう。
DT200WRのエンジンは軽いので1人で作業することも十分可能ですが、怪我等の無いようにできれば2人がかりで行いたいところです。
怪我だけでなく、エンジンをフレームに引っ掛けて傷つけたり、車体を倒してしまったりする恐れもあります。
せっかくここまで丁寧に作業してきたのですから最後まで気を抜かずに作業して、気持ち良く終わりたいものですよね。
空っぽのフレームです(^^)
引っ掛かり邪魔になりそうなホースやワイヤー類を事前に避けておきます。
搭載作業は慎重に、何度も言いますができれば2人以上で作業できると安心です。
なお、エンジン前側のエンジンマウント(マウントプレート)は外して(というよりは組み付けないで)おきましょう。
なぜかというと、エンジンを載せる際に…
フレームに引っ掛けて、このように傷をつけてしまう恐れがあるからです(笑)
…エンジンが納まりました(^^)b
次はピボットシャフトやエンジンマウント類を締め付けてエンジンを固定します。
ピボットシャフトは組み付け前に古いグリスの除去と、モリブデングリス等の塗布を行います。
ピボットシャフトが固着したら…本当に最悪ですヽ(`Д ´ )ノ。その予防が目的です。
回転軸ではないのでグリスはごく薄くでかまいません。
また、錆が出ている場合はヤスリ等で適度に均しておきましょう。
ピボットシャフトを9.0kgm、エンジンマウントボルト後下は3.3kgmでそれぞれ締め付けて…
エンジンマウントボルト前を5.8kgm、およびエンジンステー(マウントプレートボルト)を3.8kgm、
またサービスマニュアルには記載がありませんが、上エンジンステーとエンジンおよびフレームも同様に3.8kgmで締め付けます。
これでエンジンの固定は完了です。次はブレーキペダルの装着です。
ペダルを組み付ける前に、ペダルの軸にグリスを塗布しておきます。
写真ではモリブデングリスを使用していますが、ここは一応(?)回転軸ですから、ウレアグリスかシリコングリスを使った方がよいでしょう。
また、ブレーキペダルとリアブレーキスイッチを連結している「リアブレーキスイッチフック」がクランクケースに干渉するので、管理人は磨耗防止のための当て材をクランクケースに貼り付けています。
強力両面テープの片面を残して貼ると、ちょうど良い具合に滑っていい感じですよ〜(^^)
それにしても管理人の車体のリアブレーキスイッチフックはなぜか緩くて、いつもいつの間にかペダルのから外れてしまいます。スプリングやフックが伸びたり変形したりしている形跡は見られないのですが…。
フレームを塗装した際に、ブレーキなども一度全バラししているので、そのときにパーツの取り付け方を間違ったのか、取り付けるパーツ自体が違うのか…単に個体差なのかもしれませんが、ちょっと困っています。
ぼやいていても仕方ないので(^^;)、次の作業に進みましょう。
ブレーキペダルおよびリアマスターシリンダーを固定します。
ブレーキペダル締付ボルトの締め付けトルクは2.3kgm、リアマスターシリンダー本体は2.0kgmです。
ボルトを締め込んだら、忘れずに割りピンを入れておきましょう。
実は管理人は前回の作業から忘れていたようで、今回ペダルをばらしてやっと気付きました(笑)
ボルトが緩めばまずペダルがグラグラになり、完全に脱落する前に気づくとは思いますが、万が一ということも無きにしも非ず(`ヘ ´ )。サービスマニュアル等のチェックを怠らずに作業しましょう。
最後にリターンスプリングおよびリアブレーキスイッチフックを組み付けます。
これでブレーキペダルの装着も完了です。
ドライブチェンの組み付け・調整へと続きます。
※サービスマニュアルでは、ドライブチェンの組み付けおよび調整を先に行うことになっていますが、ドライブスプロケットナット締付時にリアブレーキによるアクスルシャフトの固定が必要になるため、先にブレーキペダルを装着しています。
ドライブスプロケットも先の事件で損傷したため(;_;)、新品に交換します。
スプロケットにドライブチェーンを掛けて装着し、
アクスルシャフトが共回りしないようにリアブレーキをしっかり掛けながら、ロックワッシャとナットを6.5kgmで締め付けます。
苦しい体勢&締め付けトルクが高い&ナットが薄いので、舐めてしまわないように気をつけましょう。
次に、チェーンの遊びを調整します。
リアホイールを浮かせて作業する必要があるので、バイクスタンド等(酒屋にあるビール瓶用のプラスチックケースでも可)に乗せて作業しましょう。
初期型(3XP1)のチェーンアジャスターはスネイルカム式でしたが、3XP3以降はモトクロッサーと同形状のクローズドタイプになっています。
ダブルナットをうまく調整してチェーンの張りと、アクスルシャフトの位置決めを同時に行います。
…リアアクスルシャフトの直角を出す(ホイールを進行方向に真っ直ぐに固定する)のはスネイルカムの方がむしろ楽かもしれないですね(^^;)
調整は「アジャスターについている目盛りを当てにせず、ホイールを目視して判断するように」とよく言われますが、実際のところホイールだけを見たところでイマイチ判断がつきません(管理人だけか ^^;)
どうしても気になるのであれば、フレームなど固定部分を基準にしてリアホイールの前側と後側の位置を測定する、というのも一つの手だと思いますが、個人的にはそこまでする必要は無いと考えます。
チェーンのたわみ量は、バイクを下ろしてサイドスタンドを掛けた状態におけるチェーン下側中央部で25-40mmというのが基準値です。
※適切なたわみ量とは、チェーンが最も延びた位置=ドライブシャフト(ドライブスプロケットの中心)、ピボットシャフト、リアアクスルシャフトの3点が1直線上にある位置におけるたわみに適度な余裕がある状態だと、どなたかが仰っておりましたが、まさしくその通りだと思います。
ただ、DT200WRならどのくらいが「適度」かというのは管理人には分かりかねます(^^;)
なお、モタードで基本オンロードのみでの使用であれば下限値の25mmに近づけた方が、スロットルに対するレスポンスが向上しますよ(^^)
アクスルシャフトを9.0kgmで締め付けます。
締め付け後、再度チェーンのたわみ量を測定します。
アクスルナットを締め付けるとたいていたわみ量が変化するので、それを見越して締め付け前のたわみを調整できると◎です。
アクスルシャフト締め付け後、キャッスルナットに新品のコッタピンを差し込みます。
アクスルシャフトの穴の位置と合わない場合は、キャッスルナットを締め付ける方向にずらして位置合わせを行ってください。
最後にもう一度ホイールの位置、チェンのたわみ量をチェックして、次のステップに進みます。
シフトシャフトに、プラスチックのワッシャ⇒大きなカラー⇒細長いカラーの順に装着します。
クランクケースカバー1を装着します。締付トルクは0.8kgmです。
管理人はこのボルトも他と同様、ステンレスキャップボルトに変更しようとしましたが、ボルトの形状がちょっと特殊でした。
プラスチック製のケースカバーを必要以上に締めこまないようにするための配慮でしょう。
ただ、たまに固着していることがあるので、できれば+鍋ネジ以外のヘッドにして欲しいところです( -_-)
シフトペダルをちょうど良い位置で固定します。
締付ボルトの締付トルクは1.5kgmです。
ちなみにちょうど良い角度とは…
管理人の場合はこれくらいでした(^^)
引き続きエンジン本体側の調整を行います。
とりあえず必要になるのはYPVSの調整です。
調整作業の詳細はこちらをご参照ください。
ちなみに今回は時間もあまり無いので、電源は車のバッテリーから直取りです(^^;)
万が一のことがあると車にまで被害が及ぶ恐れがあるのでお勧めはできませんが、特段問題なく作業できました。
オイルポンプ組み付け作業のついてはこちらのページで詳しく説明しております。
組み付け前に、オイルデリバリーパイプのポンプ側の先端が硬化・変形していたので、その部分だけ切り落としておきました。
ホースの長さからして、切断による対応は1回が限度でしょう。
10数年が経過したゴムホースですから、ここまできたら本来ならば交換すべきところですが、今回は応急処置として行いました。(…言い訳)
しっかりエア抜きして…
完了です。
ガスケットは本体を組み付ける前に、本体に通しておきましょう(笑)
ケーブル類やホース類が交差し入り組んでいる箇所は、分解前に写真に残しておいた方が良いですよ。
取り回しが少々変わったところで影響は無いようにも思えますが、接触したホースやケーブルが振動で磨耗し、オイル漏れなどに繋がる可能性も0ではないですからね。
クラッチケーブルは接続後、レバー側で遊びの調整も簡単に済ませておきます。
ラジエーター本体を組み付けて(ラジエーター締付ボルトの締付トルクは0.8kgm)、
冷却水パイプを接続します。
サーモスイッチリード線カプラーと、
ついでにA.C.G.リード線カプラーも接続しておきます。
プラグキャップを嵌めていない方はそちらも忘れないうちに装着しておきましょう。
そしてもう一つ、こちらも何も考えずにバラしたら最後、どこに何が付くのか必ず分からなくなる(笑)キャブレーターのアイシング防止用冷却水デリバリーパイプです。
でよいはずです。
(管理人も記録に残さずに一度バラしているので定かではありません…間違っていたらすみません)
ただ、エンジンで温められた冷却水をキャブレーター本体内に流してキャブを温めることを目的として設置されたホースですから、冷却水の流れの方向(=ホースの順序)は特に気にしなくてよいと思いますよ。
最後にキャブをエンジンに取り付けて、このパートでの作業は終了です。
ギアオイルは通常交換で750cc、OH時は800cc入れるように指示されています。
今回はもちろんエンジンオーバーホールを伴う作業でしたので、800cc注入しました。
油面調整は以降の作業が全て完了してから改めて行うことにします。
クーラントも忘れずに注入します。
エア噛みを最小限度に抑えるため、ゆっくり少しずつ投入します。
下図@の高さになるまで入れますが、こちらもエンジンを掛けて水路内のエア抜きを終えてから再度油面のチェックをする必要があります。
これでエンジン関係も全て終了!あとはエキゾーストおよび外装類の装着でようやく全てが終了します
フューエルタンクを装着、
フューエルホースを接続して、燃料コックレバーをONまたはリザーブの位置に。
ラジエーターシュラウド、サイドカバー、取り外している方はライトカウルなども取り付けて、
シートを装着すれば完了です。
あとは実走テストを行い、問題が無ければ今回の作業は全て終了です!
キックを下ろしてエンジン始動!
エンジンは何事も無かったかのように、1発でかかりました(^‐^)。アイドリングも安定しています。
ギアオイルやクーラントの油面調整を終えたところで、軽くひとっ走りしてくることにしました。
うーん、OH前よりもエンジンの吹けが良くなったような気がします。
いや、気がするだけではなく、間違いなくエンジン回転は滑らかで良く吹けている!…と思う(笑)
(※重要なパーツはほとんど交換していないとはいえ、OH直後のエンジンをいきなり全開にするのはXです)
…なんて浮かれていたところに天罰がヽ(`Д ´ )ノウワァァァァン
気持ち良く帰着して、ふと車体の下に視線をやると…冷却水が漏れています( ̄ロ ̄;)ガガーン
冷却水ドレーンボルトをきちんと締め付けていなかったことが原因でした。
空っぽになる前に気付いて良かったです(-_-;)
ギアオイルドレーンもそうですが、ドレーンボルトはもったいぶらずに(笑)エンジン組み上げ時に規定トルクで確実に締め付けておきましょうね。
どうしようもないオチまでついてしまいましたが(^^;)、短いようで長かった作業も無事終了し、今はとりあえずホッとしています。
…実は作業よりも、ホームページのレポート作成に時間がかかっていたりするのですけどね(^^;)
最後に…
ご協力いただいた皆様、本当に感謝しております。これからも大事にこのDTに乗り続けていきます(^‐^)