2005/12/13
北海道在住の管理人はバイクに乗ることができない冬季期間中に、手間のかかるメンテナンスを毎年少しずつ行うようにしています。今年はしばらく点検していなかったYPVSを診てみることにしました。
作業のおおよその流れはサービスマニュアルに書かれているので、ここでは作業の流れと管理人が個人的に気になった点を、画像を交えて説明していきます。
まずはエンジン左側(ジェネレーター側)から作業にかかります。
蓋を外すと中から「プーリー」なる、黒い皿状のパーツが現れます。
このパーツを取り外すために、
ワイヤーのアジャストナット(下の10mmのナット)を緩め、次にアジャスター(上の8mmの棒状ナット)を、一杯まで締め込みます。
面倒くさがらず最後まで完全に押し込んだ方が、余裕を持って作業できます。
このとき、プーリーの共回りを防ぐため、サービスマニュアルに従って「4φピン」を使用します。
ピンはホームセンターでも売られていますが、見つからないという方は4mm径のボルトでも十分に代用できます(※写真では4mmボルトを使用しています)。
プーリーの溝と、シリンダーに開けられた穴をあわせて、そこに4φピン(又は4mmボルト)を差込みプーリーを固定してボルトを外します。
とりあえずこれで、YPVSバルブにアクセスできるようになりました。
しかし、まだバルブを抜き取ることはできません。
YPVSバルブは左右分割式で、それぞれのバルブはその方向からしか抜くことができない構造(右側のバルブはシリンダー右側から抜くこと)になっているため…YPVSを分解清掃するにはエンジン右、クラッチ側の丸い蓋も開けなくてはならない ⇒ チャンバーを取り外す必要がある、ということになります(-_-;)
というわけで、
サイレンサーを分離してしまうと、ガスケット交換やその後の液体ガスケットでの処理など、後々面倒が生じるので、私はサイレンサーごと外してしまいます。
これで右側の丸い蓋にもアプローチできるようになりました。
では、ボルトを外して蓋を取り・・・・・・外せない!?
・・・・・・今度は冷却水用配管のステーが邪魔をしています!ヽ(`Д ´ )ノ ウワァァァン
しかも、この丸い蓋の裏側には突起のようなものが付いており、これが邪魔をして真横にスライドさせることもできず…パイプを動かして少しくらい余裕を作っても外れる気配がありません。
正攻法で外すには、どうやら冷却水を抜いて、まずこの金属製のパイプを取り外さなければならないようです…。
しかし、横着者の私がそんな面倒なことをするはずがありません(笑)
考えられる回避策は、
のどちらかです。
最初はステーを曲げることを考え、実際外すときはステーを曲げて外しました。
しかし、やけに丈夫な作りのステーのため、曲げ直そうとしても上手く元に戻らず、また、無理をするとパイプとウォーターポンプカバーに結合しているネジに嫌〜なストレスがかかりそうです…。
むしろ、パイプは3箇所でボルト止め+ゴム製の配管でも支えられている ⇒ 1つくらい無くても平気?と勝手に解釈し(笑)、また、ステーはパイプ側にあるため、元に戻すときはパイプを交換するだけでOK!ということで、結局蓋を閉じる際に切断してしまいました(^^;)
ちょっと勇気が要りますが、一度踏ん切りをつけて切り落としてしまえば、今後のYPVSのメンテナンスが楽になりますよ(^^)
曲げ、または切断処理…
によって、やっと
今度はYPVSバルブの抜き取り作業です。
まずは、YPVSバルブを分離します。
そのために、
エンジン右、クラッチ側からYPVSの穴を覗くと見えるキャップボルトが連結ボルトです。
ところがこのボルト、微妙に奥まった位置にあるので、通常の六角棒レンチでは届きません。
もちろん長軸側を使用すれば届くと思いますが、それではボルトを緩められるだけのトルクを掛けられないでしょう。
管理人はこの作業のために仕方なく、六角ソケットを買い足しました(-_- )
反対側にプーリーと4φピンを仮組みしてトルクを掛ければ、問題なく緩めることができるはずです。
10mmのスパナで押さえてもOKです。
サーボモーター側のバルブは抜き取り角度(位置)が決まっているので、その位置を探るように、少しずつ回しながら手前に引っ張るようにしてください。
抜ける位置にあるはずなのになかなか抜けないこともありますが、それでもサーボモーター側YPVSバルブのプーリー取り付け部の突起をプライヤーなどで挟み、引っ張るのはNGです。
どうしても抜けない場合は、前出のYPVSバルブ連結ボルトを仮組みして、反対側からプラハンなどで軽く小突いてやるとよいでしょう。
バルブが抜けたら、
前回の清掃からまだ2000km程度しか走行していないにもかかわらず、ここまで汚れています。
しかも高温にさらされ続けて半ば固着したオイル汚れのためそう簡単には落ちません。
「一晩(以上)キャブクリーナー漬けの刑」に処するのが良いでしょう(^^)
ここまで落ちました。
うーん、それにしてもバルブの段付が気になります。削ってみようと思います。
⇒ 失敗しました( ̄ロ ̄;)
削りすぎたー!(゚Д゚;) 仕方ないので新品のバルブを発注しました…(5,450円)
まあこれで段付のないバルブが手に入ればそれで良しとしましょう。
しかーし!新品のバルブにも段が(-_-#)
しかも一部欠けています!?
即、返品です。
ところが次に送られてきたバルブにも同じ箇所に欠けがありました。
現在のロットは全てこうなっており、また性能には問題ないという旨の(店舗の)説明書きが同封されています。
しかしこれはどう見ても鋳型の問題ではなく、部品製造後に生じた「欠け」の痕のように見えます。
バルブは連結された状態で発送されてきたので、おそらく組み上げ時にバルブ連結ボルトを締め付けすぎて、一番応力の掛かかる接触面の角が欠けてしまったのでしょう。
単に返品させたくないだけの様な気もしますが、確かめようもないですし、そこまでする気力もないので仕方なくこれを使います。
ちょうどバルブが全開になったときに、欠けた部分から圧縮が漏れてしまいそうです (;_;)
高回転域は少しくらい圧縮が漏れたほうが良く回るようになるのかもしれませんけど(笑)
…というわけで結局、YPVSの点検・清掃が、YPVSの交換になってしまいました(-_- )
なお、シリンダーの排気ポート内についてもバルブと同様にキャブクリーナー等を使用して汚れを落としますが、大量のクリーナーを直接ポート内に吹き付けてしまうと溶剤がピストン側にまで入り込んでしまい、クランクケース内に溜まる恐れがあります。
シリンダー内壁やピストンの油っ気も無くなってしまうので、シリンダー本体についてはクリーナーを浸み込ませたウエスで拭く程度にとどめるなど、ほどほどにしておきましょう。
どちらにしても清掃後は念のため、ピストンおよびシリンダー内面にエンジンオイルを塗布しておきます。
Oリングは新品に交換、オイルシールは状態を見て交換の有無を判断します。
装着時はシリコングリスを薄く塗布しておきます。
これを車体左、サーボモーター側のシリンダーへ挿入します。
バルブを抜くときと同様、バルブの入る位置は決まっているので、無理矢理押し込まずに、いい位置を探りながら差し込んで下さい。
シリンダー内部の形状をよく見ると、どの角度なら入るのかは大体分かると思います。そして、
この組み付けの際に、左右バルブの位置決め用ピンが外れてしまうことがあります。
気づかずにそそままバルブを連結させてしまわないように注意してください。
このときもバルブの回転を押さえるために、サーボモーター側のバルブにプーリーを仮組みして、4φピンをはめてからボルトを締め付けます。
締め付けトルクは0.6kgmです。この時点で、
動きが渋いときは作業ミスの可能性があります。
回転させたときに、オイルシールのフリクションだけが感じられるようでしたらとりあえずOKでしょう。
クラッチケーブルガイドの(冷却水の配管を外した方はそのステーも)共締めを忘れないようにしましょう。
これでクラッチ側は終了です。
次はサーボモーター側バルブの仕上げとYPVSの調整です。まずは、
次に、
が、ここでYPVSバルブの位置を180°反転させてプーリーを取り付けてしまうことのないよう十分注意してください。
これを間違えると、YPVSバルブの開度がめちゃくちゃになり、エンジンの調子がおかしくなります。
次に行うYPVS開度調整のときに気づけばよいのですが、調整の際、プーリー側の合いマークだけを目印にしていると、見落とす可能性もあります。
そのため(かどうかは分かりませんが…)、実はサーボモーター側のバルブにはマーク(点)がつけられています(上画像の赤円内)。
サービスマニュアルでは触れられていませんが、どうやらこのマークを上にすると、バルブを正常な位置で組み付けられるようですね。
(マークがあったら上にする、というのは整備の世界においては常識なのでしょうか…)
ここでプーリー組みつけのコツをひとつ。
まずはプーリーを裏返しにして、ワイヤーのタイコを所定の位置に収めます。
そしてプーリーをそのままくっるっと反転させると、簡単にワイヤーをプーリーに掛けることができます(^^)
後はバルブの凸に嵌めるだけです。
プーリーに4φピンを組み付け、
この時点ではワイヤーはきつく張りすぎないようにしておいて下さい。
締め付けトルクは1.0kgmです。
締め込み後、4φピンを外します。
さて、この後はいよいよYPVS調整です。
調整にはバッテリー(12V)が必要になります。
バイクを複数台所有していて、そのバイクのバッテリーを使える方は良いとしても、所有バイクがDT200WRのみ、又はバッテリーレス車のみという方は困りますよね。
私もその一人です…。
そこで今回は、現に使用している自家用車のバッテリーを取り外して使いました。
カーオーディオのメモリーを消したくないという方は、車に繋がれたままの状態でブースターケーブル等を使い、電源を引くという手もありますが、ショート、感電、漏電の危険があるのでお勧めできません。
ショートなどをさせてしまうと、車側のコンピューターや回路にも悪影響を及ぼす危険性があります。
車も持っていない、という方は仕方ありません、友人から借りましょう。
このバッテリーをコンデンサーの代わりに回路に挿入し、サーボモーターを動かすための電源を確保します。
コンデンサーをカプラーから外し、そこにバッテリーからの配線を繋ぎます。
配線は各自で製作することになると思いますが、感電やショートの危険を避けるためにも最低限の安全性は確保できる作りにして下さい。
こちらは自作キットです。
自作といってもターミナルは市販品で、あとはスピーカーケーブルの余りに鰐口端子を接続しただけの作りですが(笑)。制作費は計600円位です。
バッテリーの+をコンデンサーカプラーの赤線に、バッテリーの−をコンデンサーカプラーの黒線にそれぞれ繋ぎます。
ハーネスがやメインキーがバラバラになっているのは気にしないでください(^^;)
これで準備完了です。
メインスイッチを入れる(キーをONにする)と、YPVSが「ウィーン、ウィーン」と往復運動します。(感動…)
この往復運動後に止まった位置が、サーボモーターの全開位置です。
このときにYPVSバルブが最大開度になるよう、ワイヤーを調整しなければなりません。
サービスマニュアルは、この位置で「シリンダーの4φ孔とプーリーのピン溝を一致させる」ように指示しています。
つまり、このときバルブの開度も最大になるということです。
チャンバーを外して整備をされている方は、シリンダーの排気口から指を入れて、排気口とYPVSバルブがツライチになっているかどうかを確認してみて下さい。
(※右画像は上下逆さに撮影したものです。)
私は、YPVS調整の際はプーリーのピン溝位置のみで合わせるのではなく、バルブ開度自体を実際に確認しながら調整するようにしています。
交換前のバルブでは、プーリーのピン溝で合わせてもバルブの開度が最大にならなかったためです。
今回の新品バルブではぴったりと合いました。旧バルブが合わなかった原因はよく分かりません。
バルブの形状がそこまで変わったとは思えないのですけどね。
最良の位置を見つけられたら、その位置からできるだけプーリーを動かさないように、YPVSアジャスターを左右同じくらいずつ伸ばしてワイヤーを張ります。このとき張りすぎ、緩すぎには注意してください。
特に、YPVSのレスポンス低下を嫌ってワイヤーをきつく張りすぎると、バルブの動作が渋くなったり、全開、全閉位置付近でのバルブの動きが「カクカク」となったりします。
また、張りすぎによりバルブの動きが鈍くなると、サーボモーターの作動音が低く、唸る(うなる)ような音になるので、最初の調整時と音などをよく聞き比べて、正常・異常の判断をしてください。
ちなみにサービスマニュアルでは『ケーブルを張った後、アジャスターを4分の1回転時計回り(=ワイヤーが緩む方向)に回してからロックナットを締め付ける』という表現で、締め付けすぎに注意を促しています。
ワイヤーの張り終えたら、YPVSバルブを動かしてバルブの位置を再度確認しましょう。
調整完了!最後に、
今回の作業は終了です(^^)
道具を使ったり、付随する作業が多かったりと、なかなか面倒な整備ではありますが、YPVSの不調はエンジンに致命的なダメージを与えかねません。
できる限りこまめに点検し、普段から愛車の調子を感じながら乗ることが大切ですよ(^‐^)