2010/8/7
※ 各パーツの取り外しおよびブレーキホース交換、ブレーキキャリパーOH、マスターシリンダーOH作業はそれぞれのリンク先を参考に。
CRM250AR、KDX-SR、RMX250Sなどの2stオフはもちろん、KLX250やDトラッカー、DR250R、ジェベル250XC、セロー、WR250R…など、オフロードトレールは山ほどありますが、基本構造は昔からほとんど変わらず、作業についても同様だと思いますので参考までにどうぞ。
エア抜き等の作業のやり方は人により千差万別だと思いますが、おかしな点や間違いがありましたらご連絡をお願いいたします。また、より良い方法をご存知の方のご指導も併せてお待ちしております(-人-)
OHを終えた各パーツを組み合わせていきます。
パーツの結合は単体では行わず、実際に車体に組み付けてから行います。
ブレーキホースの「ねじれ」を適正にして、ストレスを掛けないようにするためです。
銅ワッシャーを新品に交換して、ホース等を仮組みします。
ホースのねじれの調整は、キャリパー側のジョイントを締め付ける際に行うので、先にマスター側を本締めしてしまいます。
ところがサブフレームに阻まれて、トルクレンチをかけることができません。
「万力」を使って先に締め付けられれば、それに越したことはないのですけど…機材の持ち合わせが無いので、やはりフレームの取り付け台座を利用する方向で考えます。
とりあえず上側の固定ボルトを外してマスターを少し手前に倒し、トルクレンチを掛けます。
しかし、台座がねじれて歪んでしまうので、このまま締め付けることはできません。
そこでちょうどいい厚さの板材を、スイングアームとマスターシリンダーの隙間に挟み、ねじれを抑えるようにしてみると…
若干たわみ感はあるものの(^^;)、無事台座を変形させること無く締め付けることができました。
バンジョーボルトの締付けトルクは2.5kgmで、バンジョーの組み付け方向は、
若干カーブしているバンジョーのカーブの内側がマスターのストッパーに当たる側に来るのが正解です。
次にキャリパーとホースを接続します。
ここはガスケットではなくジョイント間の「面接触」でシールすることになるため、オーバートルクは厳禁です…が、困ったことに、サービスマニュアルには締付トルクの指定がありません(-_- )
「取り外し編」で解説したとおり、ホースを取り外す段階で締め付け量の見当を付けておくと良いでしょう。
リンク先をご覧いただければ分かりますが、これで足りるの?と心配になるくらいの締め付け量です。
ブレーキホースガイドに強く接触せず、
(※下はYZ125ホース流用作業時の参考画像です)
且つねじれ量ができるだけ少なくなる位置に合わせて、
2本のレンチを使って、
締め付けます。
これでブレーキ一式の組み上げは終了です。
大半の方が、このまま次のフルード注入作業に入られると思いますが、私は違うやり方を試してみようと思っているので、とりあえずブレーキ一式を車体から取り外しておきます。
車体に取り付けた状態で作業を行う方は、以降の説明については適宜読み替えてご覧ください。
フルードの注入作業に入ります。
シャンプーポンプと耐油ホースを準備します。
シャンプーボトルにフルードを多目に入れて、
ポンプの取り出し口とキャリパーのブリュードスクリューを、耐油ホースで繋ぎます。
ブリュードスクリューはある程度緩めておきます。
ちなみに少々異なる作業方法とは…すでに半分ネタバレしていますが(笑)ご大層なものではなく、「少しでもエアが抜けやすい位置にキャリパーやマスター配置して作業する」だけのことです。
(※「注射器等で強制的に押し込む方法」を用いれば、ひどいエア噛みはまず起こらないので、車体に取り付けた状態で行うのとそう変わらないと思います ^^;)
フルード注入時は、エアを下から上に順に押し上げていくような配置にしました。
特に注意すべきはマスターシリンダーのエア噛みです。
シリンダー付近の入り組んだパーツに引っ掛かったエアは、通常のエア抜きでは抜けないことがあります。
とりあえず、リザーバーにつながるポート(穴)がシリンダーの中央に開いているため、両端にエアが残りやすいだろうと予想し、マスターを水平にしてみましたが…効果の程は不明です(逆効果かも ^^;)
シャンプーボトルのポンプを押して、フルードを送ります。
ガシャガシャ押すと、ポンプ内で気泡が立ち、送り込まれるフルードに混入してしまいます。
ただ、ゆっくり丁寧に押し込んでも…
細かい気泡の混入は避けられません。
うまくフルードを入れたつもりでもタッチが良くならないのは、この細かい気泡のせいでしょうか。
指で弾くとホース内壁にくっついていた気泡と共に上がっていきます。
しかし、フルードの粘度のためか、上がっていく速度は非常にゆっくりです。
全ての気泡をり除くのは実質不可能ですね。
どんなに丁寧に作業したとしても、再度のエア抜きは必須でしょう。
…というわけで、実際にやってみて判明したのは、シャンプーボトルは構造上ポンピング時に気泡が発生しやすいのであまりよろしくないということ(-_-;)
面倒な方、安全面に不安のある方は、最初から専用の注射器型の注入器を使った方が良いと思います。
またシャンプーボトルを使う場合は、容器内に多めにフルードを入れておくことも大事です。
減ったことに気付かずポンピングを続けていると、ポンプがジュブジュブと派手にエアを吸ってしまいます。
注入途中でやらかしてしまうとリカバリーが大変ですから、十分注意してください。
あっという間に送油完了!
キレイなフルードは気持ちがいいですね(^^)
リザーバータンクのオイルレベルは、このあとエア抜きを行うのでとりあえずは適当でOKです。
実際には、新品のパッド+ディスクの厚み分だけピストンを押し込んだ状態で、FULLの位置にあればOKです。
ダイヤフラム等が傷んでいれば、交換します。
ブリュードスクリューを締め付けます。
規定の締付トルクは0.6kgmですが、エア抜きのため再度緩めることになるので、オーバートルクにならない程度に。
紙縒りを作って、ブリュードスクリュー内に残ったフルードを吸い取ります。
こちらも二度手間ですが、垂れないように念のため。
しかし何かが足りない.........はっ、ブリュードスクリューのキャップ!!
…うーん、いくら探しても見つかりません。無くしてしまったようです(-_-;)
キャップといえば、前愛車スターレットGTのターボの配管に使っていたシリコンキャップを嵌めてみると、
おお、ぴったりです(^o^)
しばらくはこれで凌ぐことにします。
引き続きエア抜き作業を行います。
マスターシリンダーをひたすら作動させて、シリンダーピストン内に噛んでいるエアを抜きます。
そのままではピストンが抜けてしまうので、ブレーキパッドを挟み…
数分間?シュコシュコとマスターシリンダーをポンピングし続けます。
たまに傾けたり、軽く小突いたりしながら、リザーバータンクから気泡が出なくなるまで続けます。
この時点でブレーキの手ごたえはかなり戻ってきました。
あとは、混入した細かい気泡がくっついて塊になったところをキャリパー側から抜き出して、タッチが戻れば作業終了となりますが、フルードは粘度が高いので、気泡はすぐには上がってきません。
エアを集めるため、マスターシリンダーを下、キャリパーとリザーバータンクを上にして、一晩放置します。
その前に再度ホースを指で弾くなどして、軽く衝撃を与えておくと良いでしょう。
キャリパー側からの仕上げのエア抜きも、壁に貼り付けた状態で行おうとしましたが、作業中にリザーバータンクが外れて大惨事に ヽ(`Д ´ )ノ ウワァァァン
また、手で押しただけではタッチの戻りを正確に判断することができないため、車体に組み付け直してから、キャリパー側からのエア抜きをやり直すことにしました。
せっかく集めたライン内のエアを不用意に動かさないように、静かに素早く車体に取り付けます。
マスターシリンダーを固定します。取り付けボルトの締付トルクは2.0kgmです。
仮作業とはいえ、ここは規定トルクでしっかり締め付けておかないと、ブレーキペダルの感触が曖昧になってしまいます。
リザーバタンクは車体外側にタイラップで仮止めしました。
所定の位置では気泡の出具合の観察も、フルードの補給もできません。
グリスを塗布したクレビスピンを差し込み、マスターとブレーキペダルとを連結します。
念のため、使用済みのコッタピンを仮に差しておくと良いでしょう。
キャリパーおよびキャリパーサポートをスイングアームのガイドに取り付けて、
フルードを受ける容器、およびブリーダーホース(耐油ホース)を接続します。
ブレーキパッドを仮組みします。
ピストンの脱落を防ぐためのストッパー代わりにします。
エア抜き作業を開始します。
ワンマンブリーダー(ワンウェイバルブつきのホース)があると作業が楽、とよく聞きますが、車と違いバイクはキャリパーとマスターの位置が近いので、実際のところそれらの器具が無くても特に苦労することはありません。
私も特段工夫することも無く、ごく一般的なエア抜き作業を行いました。
(※今回紹介したフルードを「キャリパー側から圧送する方法」ではなく、正攻法に「リザーバーから投入する方法」で行うのであれば、ワンウェイバルブ付きのブリーダーを使ったほうが圧倒的に楽ですが、上から流し込む方法ではエアが抜けにくいので、その作業方法自体あまりお勧めできません。)
1. ブリュードスクリューを緩める。
2. ブレーキペダルを踏み込む。
すると、ブリーダーからフルードが排出されます。
このときペダル踏み込んだままにして戻さないこと。
3. ブリュードスクリューを締めてから、
4. ペダルを戻す。
4'. フルードが足りなくなったら補充する。静かに泡立てないように。
1に戻る。
上記の作業をリザーバータンク1、2杯分繰り返し、気泡を含んだフルードが出なくなればOKです。
注:ホースクランプ代わりに使っている洗濯ばさみは、緩くて作業中に何度か脱落してしまいました。
車体上での作業になりますから、フルードの飛散り防止のためにも、ちゃんとしたホースクランプで固定することをお勧めします。
続いてマスターシリンダー内のエア抜きを再度行います。
ひたすら踏む…
さらにひたすら踏む…
…と、踏み応えが戻りました(^^)v
リザーバータンクの油面は、ピストンを新品パッド2枚+ディスク分押し込んで、
そのときFULLにあればOK。
紙縒りを作ってスクリュー内に残ったフルードを吸い取ります。
今回は仕上げなので、奥までしっかりと。
キャリパーおよびキャリパーサポートのピン、ゴムブーツの洗浄とグリスの塗布をまだ行っていない方は忘れずに。
ブーツにはグリスを、これでもかというくらいたっぷり注入してください。
キャップを閉めて、
エア抜きに関する作業は完了!
…と思ったら、部品が一つ余っています(゚Д゚lll)
どこの部品か全く思い出せないので、今まで撮った写真を確認していたところ…
キャリパーサポートに付く部品ということが判明(^^;)
一安心です(^^)
ブレーキパッドを本組みします。
パッドが他の部品と接触する面に、グリスを塗付しておきます。
高熱になる部位ですから、最低でもシリコングリスを使います。
まあ、いくら耐熱性の高いシリコングリスといえども、300℃を越えるくらいにまでなれば、溶けて流れ落ちてしまうのですけどね。
装着時のパッドを、下から覗いた様子です。
パッドは裏側だけでなく、パッドスプリング(上部)や例の付け忘れていたパーツ(側面)とも接触しています。
それらの箇所も抜かりなくグリスアップしておくと、制動時のパッドの動きが良くなります。
パッドピンにもシリコングリスを塗布して組み付けます。
ピンのヘッドのネジ山へのグリスの塗付は…締付トルクが変わってしまうので、手放しに勧めすることはできませんが、固着するのもまた困ります。
私は塗付して組み付けましたが、一歩間違うと命に関わる危険な場所なので、各自の責任に於いて行ってください。
ちなみにネジ山にはグリスではなくスレッドコンパウンドを使用すると良いそうです。
私も購入しようと思いつつ、未だに実現しておりません(^^;)
パッドピンの締付トルクも…これまたサービスマニュアルに記載がありません。
他のバイクを調べたところ、'98YZ125のそれが1.8kgm、DRZ400SMが1.8kgm、またHONDAのロードバイクが1.6−1.8kgmでしたので、とりあえず1.8kgmで締め付けておきました(笑)
ホイールを傷つけないように、キャリパーassy.とホイールを組み合わせた状態にしてからスイングアームに押し込みます。
「取り付け編」で紹介した手順の逆ですね(^^)
アクスルシャフトを通します。
タイヤの下に足先を入れて、つま先でタイヤを浮かせながら位置決めを行うと簡単かつ安全です。
そのままチェーンアジャスター、アクスルナット等の組み付けも済ませてしまいました。
アクスルシャフトの締付トルクは8.0kgm、アクスルナットのコッタピンを通す穴が合わない時は、締め付け方向に回して位置を合わせます。
リザーバータンクの仮止めを解き、所定の位置に取り付けます。
フレームとリアサスペンションの隙間を通すのがなかなか大変ですが、リアサスペンションを手でこじ開けるようにして、少々強引に押し通します。
蓋およびカバーを組み付けて、
0.4kgmで締め付けます。
手持ちのトルクレンチの設定範囲の最小値を下回っているので、感覚で締め付けています。
ブレーキホースガイドは劣化し、ひび割れを起こしているので新品に交換します。
締め付けトルクは0.7kgmです。
ペダル位置(高さ)に問題が無いことを確認して、クレビスピンに脱落防止用のコッタピンを挿します。。
高さが合わない時は、ダブルナットを緩め、アジャスターを回して調整してください。詳細はサービスマニュアルを参考に。
なお、コッタピンは新品への交換が基本です。
ブレーキスイッチおよびフック等を取り付けます。
ブレーキランプが正常に動作するか、後ほど確認しておきます。
ペダルを13-15mm踏み込んだ時にランプが点灯するように、アジャスターを回して調整します。
キャリパープロテクターを組み付けます。
取り付けボルトの締付トルクは1.0kgmです。
パーツの付け忘れ、締め付け忘れ、液漏れ等が無いかをひと通り確認して作業完了!
初挑戦で不安と緊張の連続でしたが、今まで怖くて手が付けられずにいたマスターシリンダーの分解や、ブレーキラインのエア抜き作業をクリアできたことで、また一つ、メンテナンスの幅を広げることができました(^^)v
完全に戻ったと思われたブレーキタッチでしたが、やはりなんとなく柔らかい気がするので、翌週末に再度キャリパー側からのエア抜きを行ったところ、完全に抜け切っていなかったらしく…1発目のポンピングで結構な量のエアが出てきました。
エア抜きと、念のためマスターのポンピングも少し行ってから試走してみると、タッチはほぼ完璧と思われるレベルにまで戻っていました。
フルード注入時に混入する細かい気泡はどうやっても取り除けないので、エア抜きを1回で完璧に終わらせるのは多分無理でしょう。
タッチがスカスカの状態で公道を走らせるのは厳禁ですが、何となく戻っていないような気がする時は、しばらく使用して再度エア抜きすることを何度か繰り返していると、いずれ戻ってくると思います。
何度エア抜きを繰り返しても、どうしても良くならないときは、注射器型の注入器を使い、逆にキャリパー側から押し込んでエア抜きするなど、工夫してみてください。