2010/7/17
18年…長いですね。
面倒なことは先延ばしにする性格とはいえ、よくぞまあここまで!といった感じです。
ブレーキは一応、普通に効いていましたが、内部パーツはおそらくボロボロで、ブレーキフルードは…もはや液体ではないかもしれない!?(゚Д゚;)
ブレーキパッドの厚みもそろそろ限界ですし、マスターシリンダーはもちろん、目に見えない劣化が気になるキャリパーやブレーキホースなんかも今回まとめてオーバーホールしてしまおうと考えています。
※当初の「分解整備」に関する記事は、管理人の古い知識・情報に基づいて書かれており、内容に相違があったため、2010年8月29日に改変しました。大変ご迷惑をおかけしました。
一昔前まで世間一般で「重要保安部品」と呼ばれていたブレーキマスターシリンダーやブレーキキャリパーの分解整備については法律で、
『自動車の使用者は指定する保安部品を分解整備したときは、15日以内に国土交通大臣の行う分解整備検査を受けなければならない』
と規定されており、分解整備を行った場合には陸運局で15日以内に分解整備検査なるものを受けなくてはならず、違反した場合は『10万円以下の罰金』ヽ(`Д ´ )ノ が科せられることになっていました。
しかし、分解整備検査に関する条項は平成10年に廃止され、重要保安部品という概念も法律上は消滅。現在は、車両の使用者が分解検査を行った場合は、「点検整備記録簿」に整備内容を記入し、2年間保存する義務を負うのみとなりました。(道路運送車両法第49条2)
ただし、それが認められているのはあくまでも車両の使用者本人であり、他人の車両に対して分解整備を行うことができるのは、認証整備工場に籍を置いている整備士だけです。
(ちなみに旧規定では、認証整備者は「分解整備検査を代行」できる=認定工場で整備すれば検査は必要ない、とされていました。)
使用者自らが行えば法令上問題ないことにはなったとはいえ、ブレーキ周りのパーツは自分や他人の命に関わる重要部品ばかりですから、整備に自信のない方は認証整備工場に任せるようにしましょう。
自ら行う方は…点検簿への記録をお忘れなく(笑)
注1)道路運送車両法第49条の2
自動車…の使用者は、当該自動車について分解整備…をしたときは、遅滞なく、前項の点検整備記録簿に…事項を記載しなければならない。ただし、…第78条第4項の自動車分解整備事業者が当該分解整備を実施したときは、この限りでない。
注2)自動車点検基準第4条(点検整備記録簿の記載事項等)の2
点検整備記録簿の保存期間は…同条第4号及び第5号(=運送事業および有償旅客運送の用に供する自動車以外の自動車および二輪車)に掲げる自動車にあつては二年間とする。
注3)道路運送車両法施行規則第3条(分解整備の定義)
道路運送車両法第49条第2項の分解整備とは、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
一 原動機を取り外して行う自動車の整備又は改造
二 動力伝達装置のクラッチ(二輪の小型自動車のクラッチを除く。)、トランスミッション、プロペラ・シャフト又はデファレンシャルを取り外して行う自動車の整備又は改造
三 走行装置のフロント・アクスル、前輪独立懸架装置(ストラットを除く。)又はリア・アクスル・シャフトを取り外して行う自動車(二輪の小型自動車を除く。)の整備又は改造
四 かじ取り装置のギヤ・ボックス、リンク装置の連結部又はかじ取りホークを取り外して行う自動車の整備又は改造
五 制動装置のマスタ・シリンダ、バルブ類、ホース、パイプ、倍力装置、ブレーキ・チャンバ、ブレーキ・ドラム(二輪の小型自動車のブレーキ・ドラムを除く。)若しくはディスク・ブレーキのキャリパを取り外し、又は二輪の小型自動車のブレーキ・ライニングを交換するためにブレーキ・シューを取り外して行う自動車の整備又は改造
六 緩衝装置のシャシばね(コイルばね及びトーションバー・スプリングを除く。)を取り外して行う自動車の整備又は改造
七 (省略)
まずはオーバーホールに必要なパーツを調達します。
純正部品の発注は今回も、対応が早くて丁寧なナップスさんのウェブショップです。
購入した純正部品は以下の通り、
もかかってしまいました( ̄ロ ̄;)
うーん、ホース,リザーバの1,155円が無駄に高いですね。
いつでも交換できる部位ですから、今回慌てて交換する必要は無かったかもしれません。
ちなみにブレーキホースは、モトクロッサー'90YZ125のリアブレーキホースが流用できるとの情報を得ていたので、ケブラーホースであることを期待しつつ、こちらを注文しています。
その目論見は…
残念ながら外れました(笑)。これはどう見ても普通のゴムホースです。
DT200WR純正ホースとの比較や交換作業等の詳細は後ほど紹介します。
また、ブレーキフルードと、
フルード注入作業用に、シャンプーボトルと耐油ホースを用意しました。
ブレーキフルードは以前購入し、未使用のまま保管していたものを利用しました。
なお、グレード(DOT)変更する場合はオイルの「ベース」の種類に注意してください。詳細はこちらです。
シャンプーボトルは100円ショップ(ダイソー)で100円、耐油ホースはホームセンターで150円/m のものを1mで150円で購入。
フルードの注入には、本来なら注射器のような専用の器具を使うのでしょうけど、安価で簡単に入手できる代用品で対応します。
ここで大事なのは、キャリパーのブリードの口径と、シャンプーボトルの口径を合わせることです。
(異径ジョイントを使っても良いですが、そこまでする方はなかなかいないかもしれません ^^;)
私は内径5mmの耐油ホースを使いましたが、ブリード側は4mmだときつく、5mmでは少々緩い感じです。
ただ、対応するシャンプーボトルの口は5mmの方が圧倒的に多いと思います。
ホース内壁に油が付着すると更に緩くなりますから、5mmサイズを使用するのであれば、ブリード側はクリップのようなもので留めたほうが良いでしょう。
それでは準備が整い次第、作業に入ります。
今回のような作業内容では、先にフルードを抜いてしまうのが一般的な進め方でしょうか。
実際、サービスマニュアルでもそのように指示されています。
ただ、ブレーキフルードには塗装を溶かすという困った性質があるので、私は念のためブレーキ一式を取り外してからフルードを抜いています。
ちなみにフルードは水溶性なので、万が一フレーム等の塗装面についてしまっても、すぐに水で洗い流せば大丈夫です。
まずはキャリパーガード(プロテクター)を取り外します。
解説は特になし(笑)
次に、キャリパーが固定されている段階で先にパッドピンを緩めておきます。
ピンの六角穴に詰まっている土などをきれいに取り除いてから作業してください。
固着気味のときは、手のひらで六角レンチを「パンッ」と弾くようにして回すと、パキッと外れます。
その際、レンチがブレないように反対の手で付根をしっかり押さえていないと、ヘッドを舐めてしまいます。
六角穴ボルトは舐めやすいので、固着の状態がひどく、明らかに危険と分かる時は無理をせず、そのままバイク屋に持ち込むほうが賢明でしょう。
多少固着していてもヘッドを舐めるようなことがない、メガネレンチやボックスレンチが使える六角ヘッド+ステンレス製のパッドピンがDRCなどから販売されています。
残念ながらDT200WR用はすでにラインナップにはありませんが、現行モデル用で流用できるものがあるかもしれないと思い、純正パッドピンのサイズを測ってみました。
結果は、
…DRCのラインナップなら「A-TYPE 52mm D58-33-074」が流用できそうですね。
ただ、ネジの口径やピッチ、ピン部分の直径、ヘッドからピン部分へ移行部のテーパーの角度などはカタログから読み取ることはできないので、基本的には現物合わせとなるでしょう。
後々余裕があれば試してみたいと思います(^^)
話を戻します。
ブレーキパッドも取り外しておきます。
摩擦材(ライニング)は、一番薄い部分で厚さ約2mmまで減っています。
ヤマハが指示する使用限界は1mmですので、まだ使えることは使えますが…。
摩擦材が無くなり、金属製の台座(プレッシャープレート)とブレーキディスクが直接摩擦するようになれば、ディスクがボロボロになるのはもちろんのこと、金属同士の摩擦により発生した熱でキャリパーのシールやピストンまで損傷することがあります。
また、ライニングは薄くなるにつれ、磨耗が加速度的に進むようになるので、まだ大丈夫と思っていたらあっという間に磨耗が進み、ディスクを傷つけてしまった(゚Д゚lll)というのは良くあることです。
もったいない気もしますが、ケチらずに交換することをお勧めします。
続いてキャリパー本体を取り外すため、リアホイールを外します。
チェーンアジャスター等はそのまま、単純にアクスルナットを緩めてシャフトを抜くだけでOKです。
構造上は、ブレーキディスクを取り外すだけでキャリパー本体を抜き取ることができるはずですが、ネジロック剤の処理等が必要になるので、ディスクのみを外す方が多分面倒です(^^;)
リアホイールを外す際は、リムに傷を付けないように注意しましょう。
先に無理にホイールを引っぱり出すのではなく、ホイールとキャリパー(サポート)を同時に後ろにスライドさせて、キャリパーがホイールに接触しないように抜き取ります。
キャリパーサポートはリアアームに沿って設けられたレールに組み合わせられています。
後方に引くと抜くことができます。
キャリパーをキャリパーサポートから分離します。
キャリパー本体はこのように、互い違いのピンでサポートにフローティングマウントされています。
ピンの損傷(段付き磨耗等)の有無をチェックし、ゴムブーツ等は取り外して洗浄しておきます。
ここがグリス切れを起こして錆び付いたりするとキャリパーの動きが渋くなるので、OH後装着する際は、ピンおよびゴムブーツ内部へのグリスアップを忘れずに行ってください。
ブレーキホースのクランプに亀裂があったので交換します。
パーツは手配済みで、ホルダー,ブレーキホース2/3BN-25876-00 283円です。
マスターシリンダー本体を取り外します。
ブレーキペダルとマスター下部を接続しているクレビスピンを抜きます。
裏側に脱落防止のコッタピンが隠れているので、先に引き抜きます。
ピンに錆や段付き磨耗等が見られる場合は、修正または交換してください。
マスターシリンダー本体を取り外す前に、ブレーキホースのバンジョーボルトを緩めておきます。
パッドピン同様、本体を車体から取り外してしまうとトルクを掛けられなくなるからです。
緩めるときは、同じくパッドピンの時のように、手のひらでインパクトをかけてカツッと緩めます。
じわーっと力を掛けるとマスターシリンダーの台座が歪む恐れがあります。
フルードが溢れるのであくまでも緩めるのみにとどめておきます。
緩みずぎたら軽く締め付け直してておきましょう。
ここでやっとマスターシリンダーを取り外せます。
リザーバータンクを取り外します
そのまま抜き取ることは…できませんでした。
ほんのわずか、リザーバータンクの蓋の厚み分が引っ掛かるのです。
先にブレーキフルードを抜いて、蓋を外してしまえば問題ありませんが、それじゃあ今までの話は何だったの?ということになりますね(^^;)
(…だからSMでは最初にフルードを抜いてから作業するように指示しているのか -_-;)
とりあえずリアブレーキスイッチを台座から外します。
それでもリアクッションおよびブレーキホースのガイドに引っ掛かってしまうと思います。
ブレーキホースのガイドを少し曲げ、リアクッションを手で押し上げながら少々強引に引っ張り、なんとか抜くことができました(^^;)
リアブレーキ一式の取り外し完了!
引き続き、各部の切り離し作業に入ります。
ブレーキパッドやゴムブーツを取り外して、オーバーホール前にキャリパーの洗浄を行います。
(※下は以前の作業時に撮影したイメージ写真です)
ひどい汚れは先にブレーキクリーナーを使って浮かせておき、あとは食器用の中性洗剤でブラッシングするだけで十分キレイになります。
洗浄後はOH時に水分が混入しないよう、水気をしっかりと拭き取っておきます。
ブレーキフルードを抜く準備をします。
…その前に、キャリパーのOHを考えている方はマスターをポンピングして(ブレーキを作動させて)、ピストンをできるだけせり出した状態にしておきましょう。
エアツールを使える方は問題ありませんが(※サービスマニュアル参照)、管理人のようにピストンを手で引き抜く場合は掴み代が必要になるからです。
もしくは、そのままピストンをフルードごと抜き落としてしまっても構わないと思います(^^)
キャリパーのブリード(ブリュード)スクリューに例の耐油ホースを繋ぎ、オイルの空缶などで受けます。
私はフルード注入時の準備も兼ねて入念に位置合わせを行っていますが、抜く段階ではとりあえずリザーバータンクを一番上に、ブリードスクリューを一番下にしていれば問題ありません。
リザーバータンクのキャップを外します。
ダイヤフラムまで外して上部を開放しないと、フルードはすんなりと抜けていきません。
ダイヤフラムブッシュ(カバー)を取り外します。
ダイヤフラムが現れます。
ひどい変形等は見られません(^^)
ダイヤフラムをめくると…
フルードはいわゆる「コーヒー色」です。
18年間放置していてこれなら、まだましな方ですかね(^^;)
ブリードスクリューを緩めて、フルードを抜きます。
…せめてフルード交換だけでも、もっと早い段階でやっておくべきでした。
ブリードスクリューを取り外して見てみます。
腐食が思った以上に進んでいますね。
こうなることを予想して、パーツを注文しておくべきでした(-_- )
また、緩締を繰り返す場合は、円錐形になっている先端部分の傷みにも注意してください。
このテーパー形状の「面」が押し付けられることにより密閉を保つ構造になっています。
フルードを抜き終えたら、各パートにバラしていきます。
まずはキャリパーを切り離しますが、その前にやることがあります。
いくらSMを読んでもキャリパー側ストレートフィッティングの締付トルクに関する記載が無いので、現在の締め込み位置から締め込み量を割り出しておきます。(※一度も触っていないことが前提になります)
基準の位置はここで…
2本のレンチを使って一度完全に緩めます。
次に、手で締められる限界まで締め込みます。
最初と最後の差が、レンチで締め付けるべき量ということになります。
この「見た目」の締め込み量を写真などで記録しておいてください。(…テキトウ過ぎ?^^;)
ちなみにブレーキホースを交換しない場合は、単純にマークした位置まで締め直せばOKです。
…ご覧いただいたとおり、レンチを使って締め込む量はわずかです。
ここもキャリパーのブリードスクリューと同様、ガスケットを使っておらず、テーパー状の凸凹の面接触によるシーリングですから、組み付けの際はオーバートルクにならないよう注意しましょう。
ホースの中をのぞいてみると…
ジェル状に変質したフルード?がフィッティング開口部に付着していますヽ(`Д ´ )ノ ウワァァァン
これではマスターシリンダー内部の状態も危ぶまれます(-_-lll)
最後に、緩めておいたマスターシリンダー側のバンジョーボルトを外します。
マスターシリンダー内に残っているフルードを完全に排出します。
ダイヤフラムなどを再利用する場合は、水洗もしくはパーツクリーナーでもWAKO'Sの一部の製品のように、親水性のあるタイプを使い洗浄するなどして作業完了。
次は各パートごとにバラしていきます。
…が、日も落ちてきたので、今日の作業はとりあえずここまで。
結局、分解前の準備だけでほぼ丸一日費やしてしまいました(-_-;)
撮影しながらの作業はどうしても時間がかかります。