wheels / タイヤ・ホイール

2006/5/20

RK EXCEL/17インチスポークホイール組み上げ

スポークホイールは素人でも組み上げられるのか?

スポークホイールの組み上げについてはどの雑誌を見ても、「非常に難しい」、「素人は手を出さないほうが良い」的なことが書かれており、『ホイール組みはプロに任せなければならない』という考え方が通念化しているようですが、実際のところどうなのでしょう?

確かに0.1秒を争うレースであれば、スポークの張りやリムの振れについてもシビアにならざるを得ないと思います。
ですが、トレールとして使用する際の許容範囲というものを考えてみたとき、バイクについての知識のある人が時間をかけて組み上げれば、問題無いレベルで組み上げることは十分可能なのではないでしょうか。

例えばDT200WRのサービスマニュアルを見ると、リムの振れ限度は2mm以下となっています。
実際に組み上げてみると分かりますが、2mmはかなり激しい振れです(笑)。多分、1mm以内に収めるとしても、ほとんど苦もなく組み上げられると思います。
私は、0.4mmを基準にしていますが、作業時間は2時間くらいです。プロの方ですと、0.2mm以内で20分とかのレベルになるようですね(^^;)
サービスマニュアルで「2mm以下」と定められているのですから、少なくともそれ以下の数値であれば基本的には安全性に問題はないはずです。

ただ、スポークホイールの組み上げにおいては、リムの振れだけではなく、スポークの張り、つまり締付けトルクの管理も重要なファクターとなります。
これについては管理人も、実は具体的な数値などはよく分かっていません。
「きつく締め付ける必要は無く、とりあえず均等に張っていれば良い」という一般論に基づき、スポーク用のトルクレンチなどは使わず、極端なトルクのばらつきがないように気をつける程度です。
それでも装着後、1年間走行して特に問題を生じることはありませんでした。
(…もちろんこれで絶対的な安全性が確認されたわけではありませんが。)

…と、ここまでさんざん「素人によるホイール組みの可能性」について述べてきましたが、私自身はこれを皆さんに積極的に推奨したいわけではありません。
ホイール組みが難しい作業であることには変わりありませんし、一歩間違うと大きな事故につながる可能性があるからです。
ただ私と同じように、自己責任において挑戦してみたい!と考えておられる方々に、「同じ事を考えて、実際に挑戦してみた人がいる」ことを知って欲しい、そんな気持ちから今回このレポートを書きました。

事故等を起こすと他人にも迷惑がかかります。
少しでも心配な方は信頼のおけるショップに任せましょう!
(どの店が”信頼のおけるショップ”なのか分からないから困るんだ!と常々思っている私ですが…^^;)

作業工程 1.仮組み

ここからは実際の作業内容を紹介していきますが、記載内容はあくまでも参考程度に止めてください。
私はプロに習ったこともありませんし、その作業を自分の目で見たことすらありませんので、私のやり方は我流中の我流、プロの人からすれば「何じゃこりゃ?」と思われてもおかしくないような、そんな内容を含んでいる可能性が十分にあります(笑)

さて今回は、WR400FのハブにRK EXCELの3.5インチリムを組み込みます。

RK EXCEL リム 17−3.50

合わせるスポークは、たまたま出品されていた新品をオークションで落札しました。
今は、年式と車種を伝えるだけでワンオフで作成してくれるショップもたくさんありますので、スポークの調達にはそれほど困らないでしょう。

まずはスポークの仮組みを行います。
リムにも左右があると、何かの雑誌で読んだことがあったのでRKに問い合わせてみたところ、「左右は無い」との回答でした。

単純に1本ずつ順番に止めていってもよいのかもしれませんが、前回DT200WRのフロントホイールでそのように進めていったところ、途中からうまくいかなくなってしまったので…

スポークをハブに全て通してしまってから…リムを重ねてその状態を保持したまま仮止め

上下関係はそのままに

スポークの上下関係を確認しながら、一気に全てのスポークをハブに通してしまい、そこにリムを合わせて重なる順番をずらさないようにしながら仮組みしていきました。
WR400Fのスポークは内側も外側も同じ長さですので、重なる順番にだけ気をつけていれば大丈夫です。
ハブのスポーク穴を見れば、内側と外側は判断できると思います。

あとはきつくなりすぎない程度にスポークを全体的に締め付けます。
車のホイールナットを締め付けるときの要領で、均等になるように対角線を結ぶような感じで少しずつ締め付けていってください。
どこまで締め込むかの目安を大体決めて(例えばスポークのネジ山を1mm残す、とか)、全スポークが同じ量だけ締め込まれるようにすると良いでしょう。

新品のスポークは長さがきれいに揃っているので、実のところ、全部のスポークを同じくらい締め付けることさえできれば、大抵はその時点でいい感じの円になっているはずです。リムも新品であれば尚更です。
新品のスポークとリムを使ったホイール組みであれば、私のような素人でも何とかなるのはこのためです。
この仮組みの出来次第で、次の振れ取り作業にかかる労力が随分変わってくるので、この作業をおろそかにしないで下さいね(^^)。

仮止め完了

うーん、今回は結構歪んでいますねぇ(-_-;)

次は、メインの振れ取り作業に入ります!

2.装置解説

まずは管理人自作の振れ測定器(?)を紹介します。

測定装置全景

…といっても外したフロント周りに、定規とノギスをガムテープでくっつけただけのものです(-_-;)
ちなみに土台となっている黒い箱は、スピーカーです。
なお、メーターギアユニットはフリクションが大きく、ホイールの回転が悪くなるので装着せず、代わりにYZ用のホイールカラーを用意して使用しています

実は、定規やノギスをガムテープ止めにしているのがポイントです(笑)

測定部拡大 1測定部拡大 2

完全にリジットにしてしまうとホイールの回転を妨げてしまいますし、逆にフリーにしすぎると正確な数値が得られなくなります。
その点ガムテープ止めは振れたホイールが当たったときの反発力が程良く、ホイールを回し続けても的確に振れ具合を確認し続けることができました。

ホイールのセンター出しに関しては、ノーマルの新品状態の数値(ハブの幅とリムの幅を計測し、ハブとリムのオフセット量からセンターを導き出す)が分かっていればそれに従いますが、モタードで太いサイズのタイヤを入れる場合、そのままのオフセット量ではチェーンやフロントフォークに干渉する恐れがあります。
私はたまたまフロントフォークやスイングアームを使ってホイール組みをしているので純正の初期設定値は考慮せず、フォークピッチの中心とリムのセンターが一致するように組み上げました。

ただ、この装置にはホイールのセンター出し機能は付いておりません(笑)
周辺の形状から、ノギス等を使って正確な値を計測するのも困難でしたので…

クリアランス確認(ブレーキ側)クリアランス確認(メーターギア側)

目安となるような、ちょうど良い幅のものをインナーチューブとリムの隙間に当てて、左右のクリアランス確認を行いました。(かなりテキトウ…)
もちろん、ホイールセンターがフォークスパンの中心に来るように調整します。
通常は、仮組みした時点での左右のオフセット量を計測して合計し、その2分の1の値になるように調整します。

3.振れ取り作業 (オフセット)

それでは作業のコツ(というかルール)をざっと挙げていきます。

まずはオフセット量を大体で良いので調整しておきます。

オフセットを調整する場合は、

動かしたい方向(右に動かしたければ右側)にあるスポーク(ニップル)を全体的に締め、反対側のスポークを緩めます。

オフセット量調整

このとき極端にオフセットさせすぎると、クロスしているスポーク同士が強く接触してストレスが掛かり、スポークが曲がったり、走行中に折れたりする原因になるので注意が必要です。

3.振れ取り作業 (上下)

次は振れ取り作業です。振れは上下と左右の両方を見ていかなくてはなりません。
どちらから始めなければいけないということも特にありませんが、私はまず一度、上下 → 左右を別々に行い、あとは上下左右を同時に見ながら調整しています。

上下の振れは、平行に設置した大きな定規で見ていきます。

基本的には、

凸になっている山の頂点(=定規に一番近づいた位置)のスポークを締め、その反対側を緩めていく

上下方向の振れ取り(横)

ことになります。(※リムが正円になっていない場合はこの限りではありません。)

左右方向の振れをとりあえず無視している場合は、隣同士(実際は斜め同士ですが…)の左右のスポークを同じだけ締めたり緩めたりすることになります。
このとき、

頂点(反対側)にあるスポークのみを締める(緩める)のではなく、その周辺のスポークも頂点からの距離に応じて若干締める(緩める)

周辺のスポークも調整する

のがコツです。
調整は一気にするのでなく、少しずつ様子を見ながら行いましょう

基本的に、仮組みの時点でリムが正円になっていることはあまり無いと思いますので、「必ず裏側も調整…」にはこだわらなくても良いと思います。

3.振れ取り作業 (左右)

一方、左右の振れはノギスで確認しながら取っていきます。
こちらも基本的な考え方は上下の振れ取りのときと同じです。

  • 振れの頂点(=指標となるノギスに最も近づいた、または離れたとき)のスポークを、例えば右に動かしたいときは右側を締め、左側を緩めます。
  • ・ そして、上下の振れ取りのときと同様に、反対側は逆に右側を緩め、左側を締めます。
  • ・ また、頂点のスポークのみを締める(緩める)のではなく、その周辺のスポークを調整する

左右の振れ取り(前)左右の振れ取り(上)

のも、上下の振れ取りのときと同様です。

…と、基本はこのようになっていますが、最終的には上下の振れと左右の振れを同時に見て調整していかなければならず、そうなると一筋縄ではいかなくなります。

部分的に振れが出ていたりもするので、必ず反対側も調整しなければならないというわけではありませんし、上下の振れと左右の振れが同時に出ている部分もあるため、スポーク1本のみの調整となったり、調整の加減を微妙に変えなくてはならなくなるなど、仕上げの調整作業は一気に複雑になります。
一度嵌まってしまうと抜け出せなくなるかも…。

特にハマるのがリムの接合部分の歪みです。
リムによっては新品でも、この部分に矯正しきれないような歪みを伴っていることがあります。

リムの接合部

ここを無理矢理何とかしようとすると全体がうまくいかなくなってしまうので、この部分の最小限の歪みには目をつぶり、他の部分が綺麗に一直線になればそれで良しとしましょう。

現状のリムがどのように歪んでいるのかを頭の中に3Dでイメージし、「このスポークを締めたら(緩めたら)リムはどう動くのか」を常に意識しながら調整していく必要があると思います。

完成

今回はホイールのセンター出しでちょっとした勘違いがあったため、一度やり直して4時間ほどかかってしまいました(-_-;)
それでもショップに頼んで1本 10,000円で組んでもらうことを考えると…時給2,500円相当の労働です。
アルバイトと考えればなかなかいい金額ですね(笑)

どこまでの精度でやるかは個人の技量と性格にかかってくると思いますが、私の場合はリム接合部の歪みを含めて、0.3〜0.5mmの振れに抑えることを目標にしています。
実際にやってみると、0.5mmは結構楽ですが、0.3mmは正直きついです。接合部の歪み方によってはどうしても無理な場合もあります。
ただ、組み上げたあとの実走で問題が出た場合、再調整は困難ですので、できるだけ精度を上げておくに越したことは無いでしょう。

最後に

スポークホイールの組み立て工賃が高いのは、とにかく時間がかかるからでしょう。
ショップの場合は、ホイール組みに慣れていようがいまいが、プロの仕事(お金をもらってする仕事という意味です)に恥じないクオリティーで仕上げなくてはいけません。
そうなると、慣れていないショップでは、結局素人が素人レベルで仕上げるのと同じくらいの時間がかかってしまいます。
例えば、YSPの工賃体系で3時間かかったとすると、15,000円〜24,000円という工賃に相当します。
ショップにとっても、何時間もホイール組みの為だけに時間をとられるのは困るでしょうしね。

慣れてくるとオフセット等も自分で細かく調整できるので、むしろ自分でやる方が気楽に思えてきます(^^)
時間をかければそれなりのものには仕上がりますよ!
(慣れるほどの本数をこなす人はあまりいないかもしれませんが…)