2009/08/22
クランクケース本体側の組立がほぼ完了し、作業はいよいよ佳境に入りました。
最後の山場となるシリンダー周りの作業に入る前に一仕事、今回はクラッチ側クランクケースカバーの装着およびクラッチプッシュレバーの調整等を行います。
本来であればプッシュレバー周辺も分解してベアリングやオイルシールを交換すべきところですが、ここは駆動系のように常に大きな力が掛かるわけでありませんし、ある意味いつでも整備可能な場所なので(^^;)今回は省略しました。
オートルーブポンプのインペラーシャフトやインペラーギアも、見た目歯の欠けや損傷は見られないので、分解せずに作業を進めます。
さすがにウォーターポンプのオイルシールくらいは交換しておけば良かったかも、と少し後悔しましたが(^^;)、前回のOH時に一度交換しているのでたぶん大丈夫でしょう。
それではクランクケースカバーを装着する準備にかかります。
クランクケースカバーおよびウォーターポンプカバー合面にこびりついた古いガスケットを、きれいにこそぎ落としておきます。
何度もしつこいようですが、金属製の硬いスクレイパー等はアルミの地肌を傷つけるので使用しないほうがよいです。
そういえば、いつも曇っていて油面の位置が良く分からないオイル量点検窓…
透けて見えないほど曇っているということは無いようです(-_-;)
とりあえずギアオイルは規定量を入れているので特に問題は無いはず…(笑)
ここで衝撃の事実が発覚!なんと......
キッククランクのオイルシールを表裏逆に取り付けていました( ̄ロ ̄;)
新品を正しく付け直しまします(^^;)
主リップ(スプリングが付いている三角山の大きい方)が油室側に向くように取り付けるのが正解です。
プッシュロッドの歯をエンジン後方方向に向け、クランクケースカバーガスケットを装着します。
プッシュロッドおよびウォーターポンプドライブギア等の噛み合いを確認しながらクランクケースカバーを取り付けます。
プッシュレバーを動かしてプッシュアクスルとプッシュロッドがうまく噛み合っているかを確認してください。
クランクケースカバー締付ボルト(6本)の締付トルクは0.8kgmです。
順番等の締付け方は特に指示されていませんが、管理人は念のため対角線に2、3回に分けて締め付けました。
なお経験上、ギアオイルドレーンボルトもこの時点で本締めしておいたほうが良いと思います(笑)
締付トルクは1.5kgmです。ガスケットは新品に交換しましょう。
この段階でキックレバーを仮装着し、キックおよびうウォーターポンプが動作することを確認しておきます。
続いてウォーターポンプカバーを装着します。
ウォーターポンプカバーガスケットおよびダウエルピン×2を取り付けます。
ウォーターポンプカバー締付ボルトは腐食がひどかったのでステンレスキャップボルトに交換、軸部およびねじ部に薄くグリスを塗布して組み付けました。
締付トルクは冷却水ドレーンボルトが1.0kgm、他2本のボルトは0.8kgmです。
こちらも経験上(笑)先に本締めしておいたほうが良いですね。ガスケットも同様に新品に交換します。
これでクランクケースカバー2の取り付けは完了しました(^^)
なお、サービスマニュアルでは同時にキッククランクの本締めも指示されていますが、キックレバーの固定位置(角度)は、次に登場するプッシュレバーとともに調整しないと決まらないため、この時点ではまだ仮装着に止めておきます。
まず、プッシュレバーを進行方向に押し、止まった位置でプッシュレバーの先端が、上画像の白矢印で指し示した「プッシュレバー合マーク」範囲内にあるかを確認します。
合マーク範囲内に収まっていない場合はプッシュロッド頂上部のサークリップを抜き、プッシュレバーのセレーションを変えて位置を調整します。
…通常はこれで作業完了ですが、実はこの調整位置をちょっと工夫するだけで、クラッチが軽くなる(場合がある)ことをご存知でしょうか。
クラッチレバーを握った力はクラッチワイヤーを伝わり、プッシュレバー上で「てこの原理」により増幅されます。(その力がプッシュレバーを回転させ、その回転運動をラックピニオンで直線運動に変換し、プッシュロッドを動かすことでクラッチが切れます)
つまり、原理的にはクラッチワイヤーとプッシュレバーの角度が90°になる位置で力の増幅量が最大になるわけですが、それはその「瞬間」に限った話であり、実際はクラッチを切り進めるにつれてプッシュレバー上のテコの「支点」は円周上を移動するため、単純にクラッチの切り始めの位置(初期位置)を90°になるように調整すればよいというものでもありません。
DTにおいては初期位置(新車設定位置)よりも鋭角になるように調整すると良いと言われています。
なんと、それだけでクラッチが平均約1kgも軽くなるそうですから、ぜひ試してみてください。
(プッシュレバー合マークについては無視してよい、ということでしょうかね ^^;)
ただ、あまり後ろに下げすぎると、
キックレバーに干渉してしまいますヽ(`Д ´ )ノ
キックレバーの位置も調整はできますが、あまり鋭角にしすぎると今度は逆にテコの力が弱くなってしまうので、両者の位置の兼ね合いを見ながらちょうど良い位置に持って行きましょう(^^)
キックレバーについては、踏み下ろした際にケースカバーに当たらない位置(回しきった時にカバーに当たる前に止まる範囲)で固定したいところですが、
この位置では確実にプッシュレバーに干渉します(-_-;)
ただ実際には、普通にキックを踏み下ろしてキックレバーがケースカバーに干渉するまで下がることはまずないので、ここはプッシュレバーの位置との兼ね合いを優先して位置を決めてください。
位置が決まりましたら、最後にキックレバーを本締めします。
管理人はその前に、キッククランクのセレーション(ギザギザ)およびねじ部にシリコングリスを塗布しておきました。
※締付ボルト等のネジ山へのグリスの塗布は、本来お勧めできる行為ではありません(締付トルクが狂ってしまいます)が、前回のようにインパクトレンチが効かなくなるほど固着してしまうのもまた困るので、締付トルクの管理をしっかりと行うことで対処します。
キッククランク締付ナットを6.5kgmで締め付けます。
これでプッシュレバー調整も完了です!
次はシリンダー周り…と行きたいところですが、クランクケースカバー装着とプッシュレバー調整のレポートだけで結構なボリュームになってしまったので、腰上の作業についてはあらためて報告することにしたいと思います。