2009/08/11
いよいよエンジン分解です!
外で作業していると通りがかりの近所の方々に声を掛けられて落ち着かないので(笑)、自宅の空き部屋で行いました(^^;)
フレームから取り外されたエンジンです。
特にエンジン内部は繊細なパーツが多いので、慌てず、地道に作業していきましょう(^^)/
まだ前側エンジンマウントステーを外していない方は、ここから始めましょう。
これを忘れると、クランクケース分割時に最悪ケースが歪みます…。
実をいうと管理人は前回、かなり危ない目に遭いました(-_-;)
通常はフレームからエンジンを取り外す時点で外してしまったほうが良いです。
フレームに引っ掛かり傷をつけることもなくなりますしね(^^)
次に外側の付属パーツを取り外していきます。
外した途端、パイプ内に残っていたクーラントがボタボタと…ヽ(`Д ´ )ノ
パーツを点検していくと、ウォーターポンプカバーとの接続部のOリングがひどく劣化していました…。
これでシールの役目を果たしていたのが不思議なくらいです(^^;)
あとは、冷却水配管のステーボルトを先に取り外しておきましょう。
前側エンジンマウントステーボルトと同様に、左右のクランクケースを結合しています。
サービスマニュアルではケース分割前に外すことになっており、今回は私もそれに倣いましたが、あえてその時点で行う意味は無さそうですし、むしろ作業の邪魔になるので先に外してしまっても良いでしょう。
ヘッドボルトは念のため締めこむ時と同様に、五芒星を描くように、対角線に交互に少しずつ緩めていきます。
ヘッド内側は…排気側に少しオイルの焼き付きが見られますが、異常というほどのものではありませんね。
まだまだ先は長いです(-_-;)。素早く丁寧に作業を進めていきます。
ピストンをケースの端にぶつけたり、クランクシャフトに余計な力を加えたりしないよう、ピストンを押さえながら丁寧に作業します。
サークリップは入れる時ほどではありませんが(^^;)、硬くて結構苦労します。
こちらもピストンに傷を付けたり、クランクシャフトを変な方向に曲げたりしないよう作業は慎重に。
ピストンの状態です。(左:排気側/右:吸気側)
前回のピストンリング交換から2,000kmも走行していませんが、排気側は一部吹き抜けています(-_-;)
排気ポートと吸気ポートの間、2stエンジンのシリンダの設計上、どうしても当たりが強くなる部分です。
リングの固着はありませんが、交換したほうが良いかもしれませんね。
吸気側はスカート部に少し縦線が見られる程度です。ピストンは再利用する予定です。
ピストントップにはかなりのカーボン堆積が見られます…( ̄ロ ̄;)
2stエンジンなのでこれくらいは通常の範囲内かもしれませんが、プレシャスファクトリーチャンバー向けのキャブセッティングも再検討の余地がありそうです。
シリンダー内壁は部分的にあたりが出ていますが、
オイル保持用のクロスハッチも残っており、まだまだ使用可能でしょう。
クランクシャフトは見た目特に異状はありません。
こちらは実際に分解して、各部を詳細に測定しなければ判断できませんね。
意外にも?ここがエンジン分解で1・2を争う鬼門だったりします(笑)
購入後、一度もここのナットを緩めたことの無い車両はかなりの確率で固着していると思います。
私も前回のOHでは、此奴に非常に苦労させられました(-_- )
下は前回OHした時のキックシャフトです。
風雨に晒されて腐食し、がっちり固着していました。
押しても引いても叩いても全く歯が立たず、結局ショップ(YSP)に持ち込み外してもらいましたが、それでも普通にインパクトレンチを当てただけではびくともせず、電熱器で加熱するなど色々手を加えてようやく外したという経緯があります。
構造上ローターホールディングツールを併用してもがっちり固定するのは難しいため、トルクが逃げてしまいなかなかうまく行きません。
固着している場合は無理せずプロに任せた方が安全かつ作業時間の短縮にもつながると思います。
カバーの周囲の6本のボルトのほか、ギアオイルドレーンボルトと、ウォーターポンプカバーを固定しているうちの1本(※上左写真参照)が、ケースカバー2の固定にかかわっています。
ちなみにこの辺りのネジは本来は+の鍋ヘッドですが、前回OHした際、ほとんどのネジが固着していて外すのに苦労したことと、+ネジでは締め付けトルクの管理が難しいことから、ここを含むエンジン周りのボルトのうち交換可能なものは全てヘックスに交換しています。
これについては賛否両論あるかと思いますが、少なくとも管理人はこの対策のおかげで、今回のOH作業が随分スムーズに進みましたよ(^^)
ケース(というかガスケット)が固着している場合は、プラスチックハンマーで軽くこずいてやります。
必ず肉厚の厚い部分を叩きましょう(^^)
クラッチの取り外しよりも先に緩めておくようサービスマニュアルでは指示されていますが、キャブインテークと同様、特にそうしなければならない理由が見当たりません(^^;)
むしろクラッチass'yが装着された状態ではレンチの位置取りが制限されてしまい作業しづらく、また、そうでなくともここのナットは厚みが薄く舐めやすいので、あえてクラッチを外す前に緩める必要性は無いと思われるのですが…。
ただ、組み付けの際は、プライマリドリブンギアとの微妙な噛み合いがある(かも知れない)ので、手順どおりクラッチ組み付け後に締め付けたほうが良いとは思います。
クランクシャフトの共回りを止める特殊工具「ローターホールディングツール」を使用して緩めます。
こんな感じでマグネトを固定し、反対側のナットを緩めます。
…しかしこれらの特殊工具、エンジンOHの時くらいしか出番はありませんが(^^;)結構値が張ります。
(2009/10/11現在で、ローターホールディングツールが6,300円、後述するクラッチホルダが7,455円)
自作できなくもないとは思いますが、作業効率や安全性を考えると、純正に勝るものはないでしょう。
5本のウィズワッシャボルトを対角線に交互に緩めていきます。
まずは中心のロックワッシャのツメをタガネ状のもので叩いて起こし、
「クラッチホルダ」を使ってクラッチボスを固定。
ナットを緩めてクラッチボスとクラッチハウジング(プライマリドリブンギアcomp.)を取り外します。
…しかし前回もそうでしたが、ここのナットは非常に硬い(-_-;)
ホールディングツールは所詮、ホールディングツールです。完全にリジットな固定ではないため、じわーっとトルクを掛けても力が逃げてしまいます。
インパクトレンチがあれば簡単に済む話ですが、所持していない場合は、手動でインパクトを与えて一気に滑らせる方法が有効です。
レンチをしっかり固定するなど格別の注意が必要ですが、過大な力をじわーっと掛けるよりも、衝撃を与えて一気に動かした方が、対象物へのダメージが少ないケースもあります。
しかし、今回のように対象物(ここではクラッチボス)を直接固定できるケースは良いとしても、ローターホールディングツールでギアを介して固定する場合などは、あまり激しいインパクトを与えるとギアの歯に過大な応力が掛かり、歯の欠けを引き起こしたりする恐れもあります。
まあこれについても賛否両論あると思いますので(笑)、心配な方は迷わずプロに任せましょう。
プライマリードリブンギアcomp.を取り外すと現れるプレートワッシャとコニカルワッシャは、位置関係とコニカルワッシャの膨らみの方向を記録してから取り外します。
ちなみに順序はコニカルワッシャが先で、軸側(中心)に向かって膨らんでいる側をエンジン側に向けて装着しなければなりません。
これを裏表逆にしてしまうと…あとで不具合が生じるかも、です(^^;)
専用工具(サークリッププライヤー)を使用して、サークリップを裏表2枚抜き取り、キックアイドルギアを取り外します。
私が使っているのは穴用、軸用の両方に使えるタイプで値段も1,000円もしない安物ですが、ラジオペンチなどでこじって無理矢理着脱するよりもずっと安全ですし、作業効率も良いですよ(^^)
取り外しの前に、キックギア、プレート、スペーサーおよびトーションスプリングの取り付け方を忘れずに記録しておきましょう。
こちらも取り外し前に組み付け方等を記録しておくと、あとで困りません。
クラッチボスを外した時と同様に、バランスウェイトギアのロックワッシャの爪を起こしてナットを緩めます。
バランスウェイトギア等のギア類およびギアカバー等を取り外します。
まずはローターホールディングツールでローターを固定し、中央のナットを緩めます。
ローターは半圧入された状態にあるため、特殊工具「マグネトプーラー」を使用し、抜き取ります。
汎用性のある市販品も出回っていますが、純正とその両方を使ったことのある方は、ヤマハ純正に限る!とおっしゃっています(^^;)
ちなみに、2009/10/11現在の価格は1,838円です。
マグネトプーラーはこんな感じで使用します…
ハンドルも付属していますが、ローターの圧入はDT200WRクラスの車両でもかなり硬いので、レンチを使った方が安全かつ確実に作業できます。
ローターが外れたら、ライティングコイルベースも取り外します。
いよいよ大詰め、まずは左右のクランクケースを結合しているボルトを全て外します。
結合メンバーはボルト10本+前出の冷却水配管ステーボルト+前側エンジンマウントステーボルトの12本です。こちらも交換できる+ネジは全てヘックスボルトに交換済みです。
ケース分割には特殊工具「クランクケースセパレーティングツール」を使用します。
価格は2009/10/11現在で、3,255円でした。
オイルシールカバーの固定穴を使用するので、カバーを外します。
クランクケースセパレーティングツールの使用方法はこんな感じ…
ケースを固定する両端の細いボルトを入れるネジ穴の位置(高さ)が異なるので、水平になるように調整し、シャフトに当てた中央の太いボルトをねじ込んでいきます。
汎用性を持たせた設計のせいでしょうか、指示通り装着しているにもかかわらず、メインアクスルとのクリアランスがギリギリです…(-_-;)
当たらないようにこまめに確認しながら作業しましょう。
シフトカムセグメント(下写真の星型のパーツ)の星型とクランクケースの穴を合わせて、
ミッションがクランクケース2側(A.C.G.側)に残るように、真っ直ぐ平行に分離します。
ねじ込みはかなりの手ごたえがあり、異常、通常の判断が付きにくいと思います。少しでも違和感を感じたら一旦作業をストップして、問題がないかを確認してください。
最も重要かつ繊細なクランクシャフト、クランクケースにダメージを負わせる可能性が高い作業です。どんなに気をつけても慎重すぎるということはありませんよ。
ケースの分割には成功しましたが…
ミッションがクランクケース1側(クラッチ側)に残ってしまいました。
⇒ クランクシャフト、ミッションともにクランクケース2(A.C.G.側)に残るように分割するのが正解
原因はキックアイドルギアの裏側のサークリップの外し忘れです。
ただ、分割時に引っ掛かるようなことも無かったので、特に問題はないでしょう(^^;)
先ほど使用したクランクケースセパレーティングツールを再度使用して、クランクケースからクランクシャフトを分離します。
行儀が悪くて申し訳ありません(^^;)。こちらもクランクケースの分割時と同様、かなりの手ごたえがあります。先ほどと同様の注意を払い作業してください。
…クランクシャフトの分離に成功!
A.C.G.側のクランクシャフトベアリングは、クランクシャフトにくっついた状態で抜けるのが通常です。
クランクシャフトはあとでじっくり点検します(^^)
乗せ替え先のクランクケースの受け入れ態勢を整えます。
ベアリングはせっかくケースを割るのですから、状態の良し悪しに関らず交換することにしました(^^)
ベアリング交換は慣れたもの(笑)。専用工具は使用せず、その辺にあるガラクタ?を組み合わせて代用します。
内容は圧入作業と基本的に同じです。入れる方向に力を掛けるか、抜く方向に力を掛けるかの違いです。
取り外すベアリングを再利用しないのであれば、内輪のみに力を掛けない…など細かいことは気にせずに、どんどん抜いてしまって構いません(笑)
作業の詳細についてはこちらをご参照ください。
一番硬いのはクランクシャフトのベアリングですが、それでもそれほど苦労せずに抜けると思います。
こちらは反対側のクランクケースです
ベアリングカバーが固着している箇所があったので、インパクトドライバーを使用して外しました(^^)
ケースの厚い部分であれば問題ありませんが、薄い部分にこの工具を使用すると台座自体が変形する恐れがあるので、状況に応じた方法を適宜選びましょう。
前回のOH時はこんなネジばかりで大変苦労しました(-_- )
このネジもエンジン組み上げ時には、同サイズのヘックスボルトに交換します。
ほぼ全てのベアリングを抜き終えましたが、残り3箇所、埋め込み式のベアリングが2個と、クランクシャフトに圧入されたまま抜けたベアリングが1個、どうしても外せません。
クランクシャフトベアリングの状況は…
クランクとベアリングとのクリアランスがこのようにほとんど皆無であり、この隙間に何かを差し込んで…というわけにはいかないでしょう。
クランクに横方向の力が加わると全体のディメンションも簡単にずれてしまいますし、何か別の方法があるとしか考えられません。
さて、クランクを眺めていて思いついたのが、
クランクピンの穴からベアリングを打ち抜く方法です(笑)。
うまくすれば、クランクのシャフト部分にしか力が掛からないため、クランクシャフト全体が歪むこともありません。
ただ、穴が一箇所しかなく、真っ直ぐ打ち抜くことが困難(というか不可能)なので、例えば温度差を利用してあらかじめ結合を緩くしておく、などの補助的な対策が必要になると思います。
…ちなみにこの方法でうまくいくかは全く保障できませんので悪しからず(笑)。管理人は素直にYSPに依頼することにしました(^^)
もう一つ、困ったのが埋め込み式のベアリングです。
完全に埋まっているので、正規のベアリングプーラーも当然役に立たないでしょう。
クランクケースごと交換するしかない( ゚д゚)、ということは無いと思いますが…何か特殊な工具でもあるのでしょうかね。
壁に穴をあけてもいい箇所であれば、「裏側から2〜4箇所小さな穴をあけて、棒状のものを差し込み叩いて抜く」なんて方法も考えられますが…実際のところどうなんでしょう。知識のある方がいらっしゃいましたらご教授ください(-人-)
結局この2箇所のベアリングはまだ使えそうな状態ではあるので、そのまま使うことにしました。
これで乗せ替え先のケースはほぼ丸裸になり、移行の準備も完了!
あとはクランクシャフトやミッションの状態を点検してから、エンジン組み上げに入ります(^^)