electrical parts / その他電装系

2004/7/7

バッテリーレス車のアース強化 (アーシング)

  • ◇ このカスタムの満足度 → 10/100 (自己満足度は100 !?)
  • ◇ 作業難易度 → 普通(アース線の加工は丁寧に)
  • ◇ 必要な特殊工具や加工 → 電工ペンチ(ウォーターポンププライヤーでも代用可)

アース強化 (アーシング)とは?

アース強化(アーシング)とは、アース回路(早い話が電気の帰り道、マイナス回路のことです)の抵抗を減らすことで電装部品の動作をスムーズにしてやろうという考え方です。
具体的には、ボディアースされている車およびバイクの電装機器のアースを、抵抗の大きいと考えられている車体を介さずに、機器から直接(または近い箇所から)バッテリーのマイナス端子に配線を接続します。

アーシングキットなるものの販売者の説明によると、このアーシングにより「交流的インピーダンスの低下」、「グラウンド電位の安定化」、「バッテリー電圧降下の軽減」などの作用が生じることで、パワーやトルクの上昇、燃費の改善や計器類の動作安定…etc. といった効果が得られるとのことです。
もしこれが本当なら、コストパフォーマンスの高い、非常に有効なチューニングといえますが…果たして真相はどうなのでしょう。

それでは上述した作用のうち、唯一管理人が理解できる「電圧降下の軽減」の視点から考察してみます。
電装系で使われた電気の帰り道であるアース線の導電率が悪いと、アース経路自体が抵抗となってしまい、E = IRより、電流(A)×抵抗(Ω)に相当する電位(V)が失われることになります。
これが「電圧降下」と呼ばれる現象です。

例えば、電線の抵抗値が0.01Ωであるとすると、10Aの電流が流れた場合、0.01×10 = 0.1Vの電圧降下が生じます。
ボディアースを採用している車両ではフレームやエンジンをアース回路として使っており、ここで顕著な電圧降下が生じると考えられています。
(特にエンジンのマウント部やフレームの溶接部で、素材の導電抵抗以上の抵抗が生じるらしいです)
そこでエンジンやフレームを介さずに、導電抵抗の低い電線で直接バッテリーのマイナス端子に直接アースを引き、電圧降下を軽減させよう!という考えから生まれたのが、今では誰もが知っている「アース強化(アーシング)」なのです。

しかし、単純にエンジン等に使われている鉄やアルミといった素材の導電率で考えてみると、アース強化の効果はほとんど期待できません。
どんなに導電率の良い高価な電線を使ったとしても、その差は微々たるものですし、なにより電装部品の動作に影響するほどの電圧降下が生じていたら、それはメーカーの設計ミスか怠慢であり、大変なことになります。

また、式より電流(A)の値が大きくなれば電圧降下も大きくなりますが、自動車の場合でも電圧降下の症状が端的に現れるのは最も大きな電流が流れる始動時(数百アンペア?)くらいです。
ましてやキック始動のDT200WRのようなバイクで、そのような大電流が流れることはまずあり得ません。

…と、ここまでアーシングの効果に対して消極的、否定的な意見を並べておきながら、それでもなお、管理人がアース強化を試みようとするその理由とは・・・・・・実は特にありません(笑)
どこかの雑誌に、ハーネスの焼けを防止できるみたいなことが書かれていましたし、まあ副作用はなさそうですので、とりあえず本当に効果があるのか試してみようかなと(^^;)
私にとってバイクは趣味的な乗り物ですので、気分的に良ければそれで良し!…なのです。あとはやはり、パーツを「作る」作業が面白いからでしょうかね(^^)

(※副作用はない、などと申し上げましたが、重量増(私のケースでは153g )というデメリットは確実に生じます。特にバイクでは無視できない重量になることもあるかと思います。従って、強化するにしても最も効果の期待できそうな箇所だけに絞り、できるだけ本数は減す方向で考えました。
私は普段、ヘッドライトは点灯せずに走行しておりますので、ヘッドライトについては無視。よって接続ポイントは、イグニッションコイルとシリンダーヘッド、オルタネーターがある左クランクケースの3点に決めました)

バッテリーレス車の場合、アース線はバッテリーの役目を果たしているコンデンサーの(−)につなぐのが一般的でしょうが、ライトカウル内にあるコンデンサーまで線を延ばして強化用アース線を接続できるようにするのは重量面でも配線面でも厳しいので、コンデンサーからの純正アース線が直に到達しているレクチファイア/レギュレーターのアースと各部を接続することにします。

レクチファイア周辺の接続状況シリンダーヘッド、イグニッションコイル、クランクケースなどと接続

しかしこれでは本当に効果無さそうだなぁ…。

というわけで正確な値は期待できませんが、手持ちのテスターで初期状態の抵抗値を測定してみました。(※0コンマ〜Ωといった微少な抵抗の計測には非常に高い精度を有する機器が必要となるらしいです)
使用したテスターは、三和電気の「PM 3」という製品(2,850円)です。

まずはクランクケースと、レクチファイア部のアース間の抵抗を計測したところ、テスターは0.1Ωを表示しましたが、このテスターの最小測定単位が0.1Ωですので、これは測定値としては使えませんね。
一方、シリンダヘッドとレクチファイア部のアース間の抵抗を測定すると、0.4Ωでした・・・・・・って、アルミと鉄で作られているバイクで0.4Ωはあり得ない数値!? (あり得るかも知れませんが…)
エンジンマウントボルトかどこかに錆や接触不良が発生しているのでしょうか…。

一通りチェックしてみましたが、特に問題となっていそうな箇所はありません(-_-:)
「数値はあてにならない」といいつつ実はちょっと気になっています(笑)
しかし本当に抵抗値が0.4Ωだとすると、電流が10A流れたと想定して…E = IRより、10(A)×0.4(Ω)=4Vの電圧降下!エンジン停止です(笑)

…あり得ないか。
まあここまでの値ではなくても、ボディアースの抵抗値が現実に悪いのであれば、アーシングで効果が得られるかも知れませんね。
そんな気がしてきました(笑)

前置きが長くなってしまいましたが、とりあえず次の作業へ。

作業手順

使用する電線は日立製 MLFC 8sq (300円/m)です。

日立/MLFC(NH-WL1)日立/MLFC(NH-WL1)拡大

これは「NH-WL1」とよばれる規格の電線で、ネットで調べたところ、きちんとした規格を持つ電線の中では耐熱性・耐候性共に最高レベルの電線であり、一般的な耐熱電線のKIVやHKIVよりも耐候性があるため、車のエンジンルーム内の配線等に使われているものらしいです。
ただネット上で「柔らかくて曲げやすい」と書かれていたのはハズレで(笑)硬くてかなりコシがあり、細かく曲げるのはちょっと難しそうですね〜。
電線の太さについては様々な種類がありますが、私は見た目、8sq が一番しっくりくるのでこの太さに決めました。
色に関しては黒しか選べないようですが、まあアース線ですから黒で良いのではないでしょうか。

まず、必要なアース線の長さを計測し、ほんの少しゆとりを取って切り出します。
線の両側には丸型端子を圧着するので、必要な長さの分だけ被覆を剥きます。

次に端子を装着しますが、8sq といった太い線の端子の圧着には専用の工具が必要になります。
もちろんこれを使用することができればベストですが、持っている人は少ないでしょうし、ちゃんとしたものは結構高価なので、この作業のためだけにわざわざ購入するのは少々ためらわれます。
なんとか専用工具を使わないで圧着する方法を考えます。
様々な方法があると思いますが、ここでは私が思いついた方法を紹介しますね(^‐^)

必要なものは、

  • ・中サイズの釘 1本
  • ・ウォーターポンププライヤー

です。

釘は細すぎても太すぎてもうまくいかないので、ちょうど良いものを見つけてください。
プライヤーはウォーターポンププライヤーが必須です。
普通のプライヤーでは挟み込む力が弱すぎて圧着不足になるでしょう。

被覆を剥いたアース線に端子をセットします。
次に端子の圧着部分の真ん中に釘を端子の圧着部からはみ出しすぎないように置き、ウォーターポンププライヤーで挟みます。

ウォーターポンププライヤーで挟み込むウォーターポンププライヤーで挟み込む(拡大)

後は力を込めて丸型端子の圧着部分を潰します。

端子圧着完成図

こんな感じです。
これで見た目は、専用工具を使ったかのようになりました(笑)
圧着は強すぎても弱すぎても駄目らしいのですが、この方法でしたら多分、どんなに力を入れたとしても潰し過ぎになることは無いと思います。
思い切りやってしまっても大丈夫でしょう。

あとは端子圧着部分には保護用の収縮チューブを被せます。
バイクの場合、アース線が外に露出しているので、接続部には防水加工を施したいところですね。
防水加工済熱収縮チューブという便利なものが売られていますが、どうやらこれは、熱収縮チューブの裏側にグルーガンのグルー(糊)をコーティングしたものらしく、熱を加えてチューブを収縮させるとグルーが溶けて隙間を密閉し、防水効果を発揮するという仕組みのようです。

グルーガンを所有している私は、

  • 1. 接続端子を圧着した後、
  • 2. 内部の導線が剥き出しになっている部分をグルーガンでコートし、
  • 3. それから通常の熱収縮チューブをかぶせ、
  • 4. 加熱して収縮させる

ことで同様の効果を得ることができるのではないか?と考え、試してみることにしました。

グルーガンを使用グルーと共にチューブを収縮させる

結果は狙った通り、溶けたグルーが収縮したチューブに圧迫されてチューブ内にまんべんなく広がり、うまく密閉することができました!

今度は反対側ですが、反対側は端子を装着する前にアース線に収縮チューブを通しておかないと、収縮チューブのサイズによっては後から通すことができなくなるのでご注意を(笑)
それ以外は同じ作業を行うだけです。

費用

今回かかった費用をまとめてみました。

  • ・日立/MLFC 8sq ×3m 945円
  • ・スミチューブA(熱収縮チューブ)8.0mm×1m 79円
  • ・接続端子(8-6S)×5個 105円
  • ・接続端子(8-8)×1個 28円
  • ・送料 1050円
  • 合計 2207円

金額はそれなりにかかっていますが、送料の割合が大きく、また、実際に使ったMLFCは1.5m、スミチューブに至っては殆ど使っていませんので、部品代だけを見ると実質600円少々で済んでいます(^o^)
グルーガンについては費用に含めておりませんが、こちらも1,000円以下で買えるはずです。
まあ北海道という土地柄、送料については諦めるしかありませんね。
問屋で100m単位などで買うことを考えれば安いものです。

線材の調達には、オーディオ界では超有名な小柳出電気商会さんの通販を利用させていただきました。
扱っている種類も豊富、安い、対応も早いで言うことなしです!

インプレッション

予想はしていましたが、特に体感できるほど変わったことはありません(笑)
燃費が改善された様子もないですし。むしろ重量増が気分的に気になります…。

アース強化 (アーシング)にメリットなど無い!?

アース強化の効力について、色々と考察している興味深いサイトをみつけました。
実際のところ、アーシングの効果ってどうなんでしょうかね?
本当にアースを強化するだけで、体感できるほどトルクや馬力が上がったり、燃費が良くなったりするものなのでしょうか。

…多分、そんな「気がする」だけのような気がします。
いわゆる「プラシーボ効果」というやつでしょうか。
でもこれって実際結構効きますよね(笑)
私も何か新しいパーツを付けると、それだけでバイクが早くなったような気がしてしまいます(^^;)

まあメーカー側も、実際の効果の有無はさておき、とりあえず「売れるから売る」のでしょう。
そして、そんな彼らの勢いに任せた誇大広告に洗脳されてしまった一部の消費者(私も含めて -_-;)が、「とても効果がありました」、という体験談(?)や情報を市場にフィードバックすることで更に 「信者」が増え、いつの間にかこんなにも巨大な市場に成長してしまった、というのが実態なのではないでしょうか。

それにしても、最初にこれが売れると考えた人はすごいと思います・・・・・・商売人として(^^)
当の本人もこんな一大ムーブメントになるとは予想していなかったかも知れませんが。